The Connect Dots

六曜とは。大安と仏滅の使い分け、そしてカレンダーへの追加方法

手帳のマス目の隅に「大安」「仏滅」と刷られている。予定を書き込むとき、一瞬気にして忘れる。しかし、引っ越しの見積もりでは、日によって金額が変わる。吉凶が価格に反映されているのだ。六曜とは何か、いつ参照されるのか、誰が決めているのか。実務の早見表から、暦学者・岡田芳朗『暦ものがたり』(角川ソフィア文庫)がたどった意外な出自まで探る。

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「日々の手元で暦注を追うなら、六曜入りの日めくりや手帳が一番早い。」

六曜早見表

六曜は「先勝」「友引」「先負」「仏滅」「大安」「赤口」の六つ。日ごとに順に巡り、それぞれに吉凶と、吉凶が入れ替わる時間帯が割り当てられている。六曜でいう午前は14時までを指す。


補助線を一本。「仏滅」の仏は、仏教とは関係がない。六曜は14世紀頃に中国から日本に伝わり、漢字が後から当てられた結果、仏教由来と受け取られるようになった語である。

用途別・選ばれる日と避けられる日

慣行として広く共有されている選び方を整理すると、次のようになる。相手が気にする可能性を見積もるための材料であって、吉凶そのものの保証ではない。

引っ越しなども日取りで金額が変わる。大安を外した平日とどの程度差が出るかは、見積もりを取ると数字で見える。

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大安が取れないときの時間帯戦略

大安は人気が集中し、式場も引っ越し業者も価格が上がる。時間帯の吉凶を使えば、代替日は作れる。

  • 午前で終わる用件 — 先勝、友引。14時までに片づける
  • 午後から始める用件 — 先負。午前は動かさない
  • 正午前後だけ空いている日 — 赤口。11〜13時に収める
  • どの時間帯も使いにくい日 — 仏滅。ただし「滅びて新たに始まる」と解し、あえて選ぶ考え方もある

短時間で済む移転や、相手先への届け物のように時刻を指定できる用件ほど、この調整は効く。

手元の端末に六曜を置く

日常的に確認するなら、標準カレンダーに読み込んでおくのが早い。データを公開しているのは、臨済宗・黄檗宗の研究機関である公益財団法人 禅文化研究所。仏教と無関係な暦注を仏教系の研究所が配信しているという、ねじれごと味わうのが正しい気もする。

iPhone / iPad
  1. 「設定」→「カレンダー」→「アカウント」
  2. 「アカウントを追加」→「その他」
  3. 「照会するカレンダーを追加」
  4. サーバ欄に次のURLを貼り付け
    http://www.zenbunka.or.jp/91_mtools/rokuyo/rokuyo.php
  5. 「次へ」。ユーザ名・パスワードは空欄、SSLはオン、アラームは任意
  6. 「次へ」で設定完了


Mac

カレンダーアプリの「ファイル」→「新規照会カレンダー」に、同じURLを入力。

Google カレンダー

禅文化研究所が「Google六曜カレンダー」を別途公開している。表示範囲は過去1年・未来3年の計4年分に絞られており、モバイル端末でも動作が軽い。

照会カレンダーは追加後に自動で更新される。合わなければ、同じ経路から削除するだけで元に戻る。

月の途中で順番が飛ぶ理由

六曜は6日で一巡する。にもかかわらず、カレンダーを眺めていると突然その順番が飛ぶ日がある。旧暦の月が替わるたびに、並びがリセットされるからだ。

旧暦1月1日は先勝、2月1日は友引、3月1日は先負、4月1日は仏滅、5月1日は大安、6月1日は赤口。7月1日からは再び先勝に戻り、7〜12月は1〜6月と同じ並びを繰り返す。

計算としてはこうなる。

(旧暦の月+日)÷ 6 の余り
0=大安/1=赤口/2=先勝/3=友引/4=先負/5=仏滅

占いというより、剰余の演算である。新暦のカレンダー上では旧暦の月替わりが見えないため、前月末と同じ六曜が二日続くように見えることがある。

禁じられた暦としての六曜

ここまで実務として扱ってきたが、六曜の出自は「江戸時代から続く公式の伝統」ではない。むしろ逆である。

明治政府は、暦注を捨てた。 明治5年11月9日、太政官布告第337号によって太陰暦が廃され、同年12月3日が明治6年1月1日となった。改暦の詔書は、吉凶を示す暦注をよりどころのないものとして退けている。方位の吉凶も、八十八夜も、入梅も、このとき公式の暦から落とされた。

それでも、六曜は広まった。 暦注に親しんできた人々は、表向き従いながら別の経路を用意する。官許の頒暦独占が終わった時期に、出所を明かさない非公認の刷り物が流通しはじめた。文化人類学者の中牧弘允が「おばけ暦」と呼ぶものだ。そこに新種の暦注が紛れ込み、筆頭が六曜だった。急速に広まったのは明治中期である。しかも理屈が立っていた。六曜は旧暦時代の公式の暦に一度も載っていない。載っていないものは、禁じられた対象にも含まれない。中牧はこれを、庶民の側からのささやかな抵抗として位置づけている。

戦後、六曜は価格になった。 戦中は出版統制で下火になり、復権したのは戦後だった。友引・大安・仏滅は冠婚葬祭業の発展に寄り添うように社会的慣行として定着し、日めくりから企業カレンダーへと版図を広げた。

一方で、公的機関は距離を取りはじめた。 2015年12月、大分県内の自治体や協議会が、六曜を記載した翌年のカレンダーの配布を取りやめ、配布済みのものを回収したと報じられている。担当課は、「科学的根拠のない迷信」を信じることが差別につながる、という趣旨の説明をしたと伝えられた。中牧はこの一件を受け、六曜には経済活動を刺激する機能と、民主主義の原則になじまない機能が同居していると整理し、科学的根拠を持たないまま世俗の慣習として定着した例として戦後日本のクリスマスを並べている。

外すべきなのか、残すべきなのか。この記事はその答えを持たない。ただ、判断の材料としての来歴は、いま並べたとおりである。

私自身は、日取りで予定を動かすことがある。変更するというより、背中を押されるという感覚に近い。良い日なら、今日のうちに片づけようと決められる。悪い日なら、注意深く、早めに切り上げる。

人と会う日には、もうひとつ働きがある。相手も同じ二文字を見ているかもしれない、という前提が、日程の相談を少しだけ滑らかにする。

それでいて、私は信じていない。引っ越しの見積もりを取るときは、むしろ仏滅を選びに行く。誰も動かない日は、安い。

六曜が生き残っているのは、たぶんそういう場所だろう。信じるか信じないかの手前で、自分の構えを決め、他人との距離を測り、ときに値段を比べる。そのための、ただの目盛りとして。あなたの手帳の隅には、いま何が書かれているだろうか。


私も使っています↓

定番 – 能率 NOLTY 手帳

壁掛カレンダー 六曜入り


出典

中牧弘允『カレンダーから世界を見る』白水社

岡田芳朗『暦ものがたり』角川ソフィア文庫、(第十章「六曜の履歴」)